« 天心記念五浦美術館 | Main | 早さの功罪 »

May 06, 2005

JR西日本のボーリング大会に関する考察

最近のJR西日本の脱線事故関連報道は、例によって「個人バッシング」方面に向っている。
今日現在では、隣区の職員43名のボーリング大会問題だ。
事故当日0:30の開始であったが、参加者のうち13名が事故を知っていたにも関わらず参加したという「モラル低下」が大問題として責められている。
朝日、日経とも夕刊社会面の見出しは「13名、重大事故と認識」のようなものだった。
テレビでも、マスコミ各社は一様にJR西職員の「人間性」について疑問を提示している。

結論から言えば、このような主観的な報道、個人の責任におとしめる問題点の矮小化には毎度ながらため息が出る。
このような飲み会はJR西日本に限ったものではないし、飲み会に参加した人間が悪いと決め付けるような物言いは、ことの本質を見逃させる。
「この会社の従業員であることに胸を張れるのか」
などという論調にはほとほとあきれる。
こんなこと、JR西日本に限ったことではないじゃない。
事故という「不祥事」と、飲み会がたまたま重なった。
参加した(させられた)人間の人格まで批判する資格が誰にあるのか。
感情論に終始するマスコミの姿勢は、とても「公共性」があるとは言えない。

いつものようにマスコミ批判から書き出してしまったが、今回言いたいのは、ボーリング大会や飲み会をはじめとする社内イベントについてだ。
私は7、8社くらいの社歴があるが、社内の公式イベントとしての全員参加の飲み会が存在しなかった会社は一社もなかった。
半数くらいの会社ではお決まりの「ボーリング大会」もやった。
派遣で週2日、半日だけアルバイトしていた会社も、忘年会の際には終日勤務を命じられ、無理やり参加させられた。
アルバイトの日給くらいの参加費を徴収された。
入社早々8日間のカナダ旅行に連れていかれた会社もある。
いずれも「懇親会」との名目で、開催が決定すれば逃げるのは難しい。
比較的自由な雰囲気の会社では、イベントを何にするかで社員にアンケートをとったところ、「熱海一泊」を全員が拒否し、「日帰りのナイトクルージング」に決まった。
その会社は今から考えてもわりに珍しい部類で、意見を言う社員が尊重された。
社員旅行を企画しても、ドタキャンする社員が複数でるような風土。
社員にとっては居心地が良いとも言える。

そう。
強制的な「イベント」を、楽しみにする人間はとても少ないのだ。
下っ端や、新入社員にとってはかなり地獄。
「仕事するだけじゃだめなのか」
と感じた経験は、飲み会好きの私でさえも複数回ある。
かなりの変わり者で通す人や、ずば抜けて優秀な人以外は、こういうイベントを拒否するのは難しい。
「協調性がない」
と判断され、評価にも影響するからだ。

今回のJR西のボーリング大会に関しても、参加していた一人一人は楽しんでいたわけではなかったと容易に想像できる。
非番の車掌や事務員が、有給休暇をとって参加していたという。
有給まで会社のために使わなければならない悲哀を感じる。
それだけでもおもしろくないのに、モラルや人間性を疑われるのは悲しすぎる。
ボーリング大会問題が露呈したのは、日本型上意下達風土の問題点ではなかったか。
自らの倫理観や正義感よりも重視しなければならない社内の人間関係。
皮肉にも「懇親会」が社内コミュニケーションになにも役立っていないことの証明のようになってしまった。
会社存続の根幹にも関わる重大事件と認識した人間が3人に1人くらいいたにも関わらず、大会の中止を表明できないような懇親会。

この事件を個人のモラルの問題と片付けてはいけない。
JR西日本が特別モラル低下していて、それに憤り、常識ハズレと叩くのは簡単だ。
叩く人のおおかたは、自分ならそんなことしないと思ってるんだろう。
だが、社内の懇親会を拒否するには、実際勇気が必要。
安穏な人間関係を捨てて変人として生きる覚悟も必要だ。
おおかたの人がそんなことやらない。できない。
だからくだらないイベントがどこの会社にも存続している。

社内の懇親会という儀式を見直し、業務そのもので社内の人間関係を創って行こうよ。
その方が楽だよ。
みんな本心ではそう思ってるんだよ。
こういう問題意識を世間が持てるいい契機だったんだけどな。

社会経済生産性本部のこんな調査もあるよ。

|

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30031/4011661

Listed below are links to weblogs that reference JR西日本のボーリング大会に関する考察:

» ボーリング大会とか西日本JR。情報操作に要注意。 [雑談日記 (徒然なるままに、、。)]
 怒りの矛先を拡散させる為の情報操作だろう。悪知恵のある奴がいるものだ。  怒り [Read More]

Tracked on May 06, 2005 at 08:44 PM

» 「マスコミ批評」カテゴリー投稿確認サイト一覧。現在9サイトであと1つ。あと1つでココフラッシュに出ます。(^^; [雑談日記 (徒然なるままに、、。)]
 下記のうち、「 Goemon's place blog(日々徒然たるもの)」さ [Read More]

Tracked on May 09, 2005 at 11:16 PM

» JR西、部下に責任を押し付ける [消費生活アドバイザーの眼]
YAHOOニュースで見た、読売新聞の記事だ。 最近、ちょっと話題として下火になっている、JR西日本の記事がこのようにひっ [Read More]

Tracked on Jul 15, 2005 at 01:45 PM

Comments

社内旅行や懇親会、ボーリング大会や社内ゴルフコンペ、ことごとく参加しています。
家族的な会社であればあるほど従業員も家族同様、プライベートを含めて会社と一心同体という感覚、分かります。
最近は、派遣社員の方も多く従来のような社内旅行やゴルフコンペは少なくなりました。
それで仕事が上手く回ればいいのですが、そこは人間の性、頼みやすい人と頼みにくい人が出来てしまいます。その溝を埋めるのが「懇親会」であり「ボーリング大会」であると思います。それにしても夜通しで救出作業をしている傍らで「ボーリング」や「飲み会」はいかがなものかと思います。

Posted by: 菊地 敏夫 | May 07, 2005 at 05:41 PM

誰も自分では責任をとろうとしない風土、
自分の頭で考えようとしない人材を
JR西日本は作ってきちゃったんですね。

それでいて、現場のことは
運転手の技量に頼る。

そのゆがんだ構造を、なぜ、労働組合などを
通じて正そうとしなかったのか、残念です。

事故が起きてから声をあげたって遅いよ。
現場は危機感を持っていたはずでは?
というのが私の感想です。

会社も悪いが、それに巻き込まれただけ
という言い訳は、人間として通るのか疑問です。

Posted by: 岩村明美 | May 07, 2005 at 02:07 PM

Post a comment