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Jan 16, 2007

派遣会社の役割って?

企業に派遣するスタッフの人選は、建前上、全ての権限が派遣会社側にあり、企業は事前に人選に口を出すことはできない。
そうは言っても、これは建前であり、やはり派遣が「営利事業」である限り、「面接」と呼ばない事前面接はほとんどの場合行われ、採用の可否は企業側から連絡が来て決定されていた。
派遣会社から仕事を紹介されて、承諾して面接(と言ってはいけないから顔合わせとか言う)に行っても、あとから断られる場合はあるし、顔合わせの段階で、「他社にも頼んでます」と言われる場合もある。
要するにそういうズルは昔から行われていたわけであり、これは派遣会社側でもスタッフ側でも派遣に関わったことのある人なら当然に知っていることだろう。
だから、派遣社員の事前面接の解禁について、何を今さら騒いでいるのだろう、というのが現場の人間の感覚かもしれない。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070111AT3S3000610012007.html

だが、一方的に労働者側に不利なようにどんどん制度が改められていく現状、このニュースもやはり厳しく見つめていかなければならないだろう。
違法行為であるサービス残業の強制が多くの企業で行われているのと同様、違法行為である派遣スタッフの「選別」は以前から企業で行われていた。
これらの違法行為が現状追認みたいな形で合法化されていくわけで、今後企業は堂々と「日のあたる道」を歩けるようになるわけだ。

労働者派遣法の改正に関する検討が厚生労働省の労働政策審議会で開始されるが、その内容は、
・事前面接解禁(つまり直接契約雇用時と同様、人選を企業が行う)
・原則3年の派遣期間の制限撤廃(つまり一生派遣社員の身分のまま雇用してもいいということになる)
・派遣対象業務の拡大(現在派遣が禁止されている警備や建設、医療従事者なども派遣していいことになる)
などだ。
これらの改正が行われれば、採用の際の条件や仕事内容は、正規社員と何ら区別がなくなるのに、身分だけは万年派遣スタッフとなるケースも出てきて、事実上、「安く使える」以外の派遣の「特徴」は消滅してしまう。
今の政治の方向が示すとおり、企業はなんのリスクを負うこともなく規制緩和の恩恵を受けるのに、従業員の方はされるがまま一方的に条件を厳しくされてしまうわけだ。
一人のスタッフを3年以上の無期限にわたって雇い続けても、その人の仕事以外の面では何ら企業が管理する必要はなく、その人の稼ぎの一部が半永久的に派遣会社に入るしくみ、なんて企業も派遣会社もおいしいだろうけど、従業員が一人泣かされる結果になるのだ。

もう「再チャレンジ」なんて看板は下ろしてほしいよ。
こんなの派遣社員の身分が一生固定化されるのを推進するしくみになるだけじゃん。
それでも「努力してないから悪い」なんて言われて、派遣先企業も派遣元企業も何の罪悪感も感じずに済んでしまうわけだ。

ただ、今回の改正は派遣先企業側にとっては良いこと尽くめだけど、派遣元企業にとってはどうなんだろう。
候補となるスタッフを何人つれて行っても企業が「NO」と言って高望みを続ければ、派遣会社側は無尽蔵にスタッフを紹介することになるとしたら、そんな効率の悪いこと続けていられるわけがない。
派遣はスタッフが稼動して初めて企業から派遣会社にお金が入る。
スタッフの募集は当然派遣会社が自腹を切って行うわけだし、企業に「面談」に行くときには派遣会社の営業マンが同行するのが普通だ。
「面談」が「面接」に変わって、企業が大手を振って「NO」を言えるようになれば、派遣会社の効率はものすごく悪くなる。
一方で、企業は募集に関する手間や経費を一切使うことなく無尽蔵に「応募」を受けられることになる。
こんなのがまかり通ればとんでもないことになるのは、誰の目にも明らかだろう。

スタッフ側から見たって、一般の募集と同様に面接が行われるのであれば、とくに派遣会社を経由して職を探すメリットは減る。
今はインターネットなどでも募集情報は検索できるから、そういう広告を見て企業を選ぶ方が良いということになる。
「仕事の紹介」でスタッフにメリットを与えることができなくなった派遣会社は、福利厚生や教育面に今まで以上に力を使わなければいずれスタッフからも見捨てられ、登録スタッフの質は確実に落ちるだろう。
そうなれば、派遣会社の倒産が危惧されることになるわけで、スタッフは派遣先で働いても給料の支払元が倒産して給料を受け取れないなんて事態も発生するかもしれない。

今は、多くの大手企業がグループ会社として派遣企業を持っている。
採用や福利厚生の負担がなくなる上に、自分のとこで働いてる人間の給料の一部が自分のグループの会社の収入になるんだから、ものすごくおいしいしくみだ。
トラブルが起こった際に間に入って調整するのも派遣会社の役割だが、グループ企業ならそれも期待できない。従業員側の立場は守られない。
こんなしくみが合法的にまかり通ってることが不思議だ。
グループ会社からの派遣は、本来ならば禁止されて然るべきなのに、逆のことになっちゃってるんだから。

制度を規制緩和するというならば、何らかのルールが必要なのは当たり前だ。
現在検討されている派遣の規制緩和は、そういう、従業員側のセーフティネットに対する検討が少なくとも表に出ていない。
派遣会社だって、単なる「美人局」にこのままではなっちゃうんだから、ここは頑張って派遣業界の立場を守るためにも奮起しなくてはいけないんではないの?
従業員ばかりいじめて溜飲を下げてるみたいだけど、なんでも企業企業と言ってると、足元すくわれるよ。

ね?労働政策審議会委員の奥谷さん。

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